人事の眼〜「どうしても採用したくなる3つの要素」とは〜

2016年5月10日

飯島英胤(いいじま ひでたね)

早稲田大学教育学部卒業。1959年合成繊維・合成樹脂をはじめとする化学製品や情報関連素材を取り扱う大手化学繊維メーカーに入社。主に人事、労務畑に従事し人事政策の策定に携わる。人事部長、経営企画室長などを経て、同社代表取締役副社長に。その後同社特別顧問。

面接時にはどのような質問をしているのか? サークル活動は採用に影響する? 面接でのチェックポイントは? 就活時の学生であれば誰もが知りたい情報を、人事採用担当経験者に直接聞く「人事の眼」。気になる面接官の本音の声を紹介する。

(聞き手・グローバル就活ドットコム)

Q:学生を採用する側もご苦労があると思うのですが、企業側が人を査定するということの難しさや取り組む姿勢についてお聞かせください。

採用について申し上げますと、特に事務系は大学や学部や性別はまったく関係ありません。人物本位です。私の経験では採用担当になった際に、体重が3kgくらい痩せました。新卒社員を一人採用するということは、会社として一人あたり生涯賃金として約3億円程度お支払いすることになります。したがって100人採用するということは300億円の投資と同等になります。ですので、会社にとって望ましい人物、将来活躍していただける可能性の高い人物を採用しようとすると、当然真剣にならざるをえません。

学生さんに知っていただきたいのは、受ける学生側にも緊張感があるでしょうが、採用する企業側も、その人の一生についての責任を負っていくわけですから、慎重の上にも慎重で真剣な対応をしているのです。

Q:大学生を採用するまでの流れを教えていただけますか?

当社の場合、大学訪問をして大学生に自社をPRすると同時に、大学生による会社訪問を積極的に受け入れており、来ていただいた方に希望があれば、ラインリクルーター、OB、OGとの面談を職場で行ないます。

特に同じ大学の先輩がいる場合、職場でフランクに質問していただいてから、人事の担当者面接、そして人事課長面接、人事部長面接、そして最後に担当役員面接を行ないます。このように四重五重のフィルターにかけながら、その間適性検査を行ないながら、本人の希望と我々の期待している人物像がマッチングしているかどうかを、最終的な判断基準にして決めていきます。

Q:大企業の場合、数百人規模で採用がありますが、「これはどうしても採用したい」というのはどのようなタイプでしょうか?

それは3つの要素があります。「共感性」があり、「人柄が良く、柔軟性と幅広いものの考え方を持って」おり、「行動力」もありそうだというタイプです。

中でも私がもっとも重視していたのは「共感性」です。これは頭の回転の速さと正確な理解力を判断します。こちらから質問をして、質問内容を的確に理解して自分なりの考えをすぐに返してくるか、ということです。その回答が正しいかどうかは問題ではありません。

そして「人柄」です。特に性格特性はあまり変わりません。そこで見るのは自己の意見に固執するタイプか? それとも幅広く柔軟に考えるタイプか? ということです。これはその人の性格によるものですから、入社しても簡単には変わらないんです。たとえば問題に直面した会議などで、ディスカッションした上司が「そうではないんじゃないの?」と聞いても意見を変えないタイプもいます。しかしディスカッションしていく中で、共感性があれば違ったアイデアが出てくるはずなんです。

それと必要なのが「行動力」。これは学生時代にどのような学生生活を送ったのか、が大事です。運動系でも文科系でもかまいません。クラブ活動や委員会活動で、どのような役割を担っていたのか? その中で問題解決の事例を聞くと、座ってものを考えていく受け身のタイプなのか、率先して皆をリードして引っ張っていくタイプなのかはわかります。後者が大事です。

Q:文系の学生は、就職活動時に「入社してからの職種」について、どのように考えておけばよいのでしょうか?

専門性の高い理系からの入社の場合は、ある程度職種は決まっていますが、文系の学生といえども、「こんな仕事がしたい」ということを自分なりに持って企業を訪問し、採用の方々と意見交換をするというのは非常に望ましいことだと思います。その時点で自分の適性を考えたはずですから。ただし、入社したあと自分の抱いていた職種や仕事に固執しないという幅広い柔軟性が大事だと思います。

Q:学生側からすると、どうしても希望する職種で働きたい、という場合も多いと思いますが。

人間というものは幅広い適性を持っています。企業は、本人と話し合って適性の中から「この人にはこの仕事が向いている」、という適性配置という観点から考えていきます。そこでは必ずしも本人が希望した職種ではないかもしれない。しかしその場合でも素直に受け止めて、実績を積んでいくということが大事です。そもそも文系の場合、幅広い適応能力があると思いますし、そうでなければいけません。

仕事も「食わず嫌い」が一番いけないんです。食わず嫌いだと、自分の能力や適性が自分ではわからない職種にあるにもかかわらず、「こんなことはやりたくなかった」と腐って投げ出してしまうような行動をしてしまう人もいます。それでは自分の将来や可能性を自ら閉ざしてしまっているのではないかと危惧してしまうのです。

Q:「希望職種について『人事』などと回答した場合、もし人事のことを聞かれたら、知識がないことがバレてしまうのが心配」と考えている学生も多いようですが。

もし希望職種として「人事」を挙げていても、私は「人事」のことは質問しませんでした。所詮「人事」のことをわかっているはずはありませんから。

しかし「人に関心があります」とか、「企業は人がつくっていくので」、といった一般論で、人事をやってみようと思っている、ということでいいんです。

さらに言えば、回答が「営業」だったとしても学生の段階では営業のことについてだって何もわかっていないわけですから。

Q:大学時代は、個人の考え方で過ごし方は違うと思いますが、学生時代にやっていたほうがよかったことなどあれば教えてください。

まず学生時代にはしっかりと勉強して、学力をつけてほしいと思います。大学の勉強が単位を取得するだけのものではなく、一般教養から専門課程に至る学問領域を選択したら、それをマスターして知識として覚えていただきたい。

これからはグローバルな競争の時代です。そこで想像力や独創力がさらに必要となってきます。これは知識と知識の組み合わせですから、知識をたくさん持っていれば組み合わせは豊富になり、多くの実践的なアイデアが出てきます。大事なことは問題を解決する智恵を多く出すことです。

私自身の学生時代を振り返っても、何ひとつとして無駄な科目はありませんでした。時間の少ない就活生の場合、学問を深くマスターというわけにはいかないかもしれませんが、薄くても結構ですから広く多くのことを学んでいただいて、柔軟な考え方や問題解決策を発想していただきたい。

二つ目は、「学生時代に得たものは何か」ということをしっかりと持ってもらいたい。いわゆるセールスポイントです。勉強でもクラブ活動でもなんでもいんです。その中でどういう役割を経験したか? といったことを採用担当も参考にします。「自分はこういうものを学生時代に得ました」というものは、就職のためだけでなく、人生においても非常に大事なポイントだと思っています。それは社会人となったあとも仲間と長いあいだ付き合っていく際の人間関係の元となってくるわけです。

三つ目はコミュニケーションのノウハウや語学力を身につけてておくことです。

これからはグローバル競争時代ですから、語学ではTOEICやTOEFL、英検のような客観的な能力判断ができるものを持ってください。海外留学を早く経験しておくことも良いと思います。

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