人事の眼〜今だから言える「採用を決めるときのポイント」〜

2016年2月3日

塚原一男(つかはら かずお)

1950年4月17日生まれ。74年4月に大手機械メーカーに入社。入社後は人事部長、経営企画部総合企画グループ部長、経営企画部長などを経て、取締役、副社長を歴任。

面接時にはどのような質問をしているのか? サークル活動は採用に影響する? 面接でのチェックポイントは? 就活時の学生であれば誰もが知りたい情報を、人事採用担当経験者に直接聞く「人事の眼」。気になる面接官の本音の声を紹介する。

(聞き手・グローバル就活ドットコム)

Q:最近の学生の傾向はありますか?

我々世代の就職先選びのポイントは、安定性があるというのが一つと、大きな会社の中で大きな仕事をしたい、できれば大きい仕事ができるポジションになりたい、という意識がありましたが、最近の人からはそういった意欲はあまり感じられません。

メーカーや商社に入社してくるということは営業の最前線、ビジネスの最前線に立ちたいと望んでくる人が普通だと思っていましたが、最初から裏方の人事をやりたいという人が増えています。しかし人事管理を勉強しているかといえばそうでもないケースも多いのです。

商学部や経済学部の人が人事を第一希望としている、そういったケースは私自身の場合には考えられませんでした。ですので、そのような志望者が来ると、採用面接で聞きたくなってしまいますね。

Q:大学選びの際に、偏差値だけで選ぶことで起きるミスマッチが、就職活動の際にも起きているのでしょうか?

それはあるかもしれません。昔は偏差値が高くても早稲田や慶応の校風が好きだという理由で進学したケースがありましたが、現在はこの偏差値ならここの大学に、というように大学進学時に本人の適性ややりたいことといったことがないがしろにされていますね。

それと同様に、就職時の企業選びにしても本当に自身の希望で選択をしているか疑問を感じるケースがあります。

Q:入社したら小さな仕事から始めるわけですが、企画などを希望する学生が多いですがどう思われますか?

それは学生の考えが及んでないんだと思います。今の学生は、入社したらすぐに営業の最前線でバリバリやるとか、大学で学んだマーケティングの知識をすぐ使えるんじゃないか、と思っているのでしょう。

技術系は入社してからそれぞれの専門分野のスペシャリストになっていくので、あまり悩む余地はないかと思いますが、事務系は、自分が何をやりたいのかということと、実際の業務とのギャップは大きい場合が多いので、「入社したが、自分の思った仕事ではない」と、入社してすぐに退職してしまうことがあります。

Q:就活学生(特に文科系)のどのようなところを見ているのでしょうか?

ひとくちで言えば、社会性。正直さ、人の話を素直に聞くか、自分の意見を話せるか、普通のビジネスができる頭があるか、というところです。成績が優秀でも社会的に幼稚な人もいますし。

また、一時期「体育会系を採用しよう」という風潮がありましたが、私は「運動部だからいい人材だ」という説は信用していません。もちろん体育会系で優秀な人材もいればそうでない人もいます。

頭は良いけど、意固地だったり頑張りすぎて自分にこだわりすぎたりもNG。こだわりがないのはダメですが。

サークル活動は何もしないよりはしているほうがいいですが、体育会系であれ文科系であれその中で何をやったか、ですよね。まとめる役だったのか、それとも引っ張っていく役だったのか。とはいえ、私の採用活動の場合、それはただ最初のきっかけ段階の話にすぎませんでした。

Q:本格的な質問はどのような内容でしょうか

私の場合、その生徒の「専門科目」を聞き、そこに質問をどんどん突き詰めていきました。それに対して最後まで頭を使って回答できるか? 知識の量や根性論ではなく、頭をどれだけ使って必死に答えるのか? を見ていました。

簡単に答えられない質問になってきると「その点はわからないけど私はこう思う」、というのと「ごめんなさい」とでは違うと思うのです。

質問が深くなってくると、3分の1くらいの学生は「ごめんなさい。勉強してませんでした」と白旗をすぐあげます。このような場合はNGでした。

回答が正しいか間違っているかは問題ではありません。しかし謝ってしまうのはダメ。専攻したことについてどう答えていくかという姿勢を重視し、そこで「自分の認識ではこうです」ときちんと応えていく学生を評価していました。

一所懸命の姿勢。そして対応力、粘り強さ、誠実さということが、質問に対しての回答でわかる。今の自分の持っているものでぶつかるという姿勢を見ているのです。

Q:どうしても採用したいという学生の特長を教えてください。

応募してくる学生の10数%程度が「ぜひ入社してほしい」、そして80数%程度が普通の学生というイメージですね。

「入社してほしい」タイプは人間として魅力があり、頭が回ること。そのような人物は一緒に働きたくなるタイプです。

Q:普通の80%の中から、どのように採用されていたのでしょうか?

よく行なっていたのは、質問の中で「君の今までの人生を映画にしたらどうなるか?」と聞いていました。喜劇なのか悲劇なのかは問いません。自分人生のどこの時代を映画にするのか? それはどんな出来事だったのか?

咄嗟の対応力、現場力を発揮して、そこで興味深い話をできるかどうかを判断していました。

Q:学生からよく聞かれる質問に「面接時に、同じ回答でも企業によって正解な場合もあるし、そうでない場合もあるのはどうしたらいいでしょうか?」というものがありますが。

それは同じ傾向の会社を回るからではないでしょうか。

B to Bの企業の場合、学生の素直さ、正直さといった信用度を、B to Cの企業の場合は頭の回転の良さを重視するでしょう。業種によって評価するポイントが違うためですが、同じ業種でも評価のポイントが違う場合もあります。

そこで学生のほうも、自分にフィットする会社とそうでない会社とを見分けるべきだと思います。

Q:職種にこだわることについてはどうお考えでしょうか?

たとえばメーカーに入社してくるということは営業の最前線、ビジネスの最前線に立ちたいと望んでくる人が普通だと思っていましたが、最初から裏方の人事をやりたいという人が増えています。また商社に就職して経理部になる場合もあるし、メーカーに就職してマーケティングをやるかもしれない。

職種にこだわって「これじゃないとだめ」となると日本の企業の人事部の場合は、あまりいい顔をしないでしょうね。そもそも学生の段階では専門性もないのでいきなり入社してその分野の仕事を任せられませんから。

ただ比較的財務部とか人事部はあまり希望者がいませんから、志望が通りやすいとは思います。

Q:就職活動中の学生へアドバイスをお願いします。

私自身の例ですが、昭和48年に就職活動をおこないました。ゼミの幹事だったので、ある銀行へ就職するのが既定路線でしたが、メーカーも訪問してみました。そこで「メーカーのほうが肌に合う」と感じたのです。

そこでゼミの先生に「申し訳ないですが、こちらにします」と報告したら、「君はそっちのほうがいいよ」と。母親も「銀行よりそっちのほうがお前は楽しそうに話してたからそうしなさい」と。

就活時にいろんな企業をまわってみることで、自分にあった会社がわかると思います。最初にイメージしていた職種や企業観が変わることは多々あります。学生のときは「就職」と考えていますが、日本は就職ではなく、就社、就業界の傾向が強い。就職活動で重要なのは、生の会社と接することができて、そのなかでフィットする会社がどこなのか、という視点を持つことが大事でしょう。

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